清水さん(仮名)のフードバンク(FB)初回利用は2年半前、当時49歳だった。急性胃腸炎を患い5日間入院治療。登録派遣社員として働き始めて2か月目に入った頃であった。
6人家族の父。病気で医療費かさみ・・・
3か月間は派遣会社の社会保険の加入できず、国民健康保険で治療費を支払った。生活費の大半は医療費に消えてしまった。病院からは「1か月くらい休業するように」と言われた。清水さんの家族は奥さん(33歳)と子ども4人(中3長女、小6長男、保育園児の二女4歳と二男2歳)の6人家族。奥さんもパートで働きだしたが初回の給与支給が6月になる。子どもが多いと何かとお金がかかり、食費の割合は特に大きい。病院退院後すぐに市役所に生活保護の申請に行った。働けるまでの間、生活保護を利用できることになったが、手持ち金がなく食料品の購入ができないことを窓口で訴えると、FBを紹介された。これが清水さんとの最初の出会いであった。1か月に米20㎏を2回に分けて支援した。
子どもがいると何かと出費が。なかなか正社員にもなれず
しばらくして、昨年夏に再びFBに訪れた。長女が高校の栄養食物科に進学したところ、実習費用が月に約4万円かかる。そのうえ修学旅行の積立金もある。夏休み中の二女の学童保育は毎日お弁当。長男は進学先の相談。二男の保育園送迎。奥さんもパート労働・・・課題は山積していた。安定した収入を目指しているが、「なかなか正社員になれそうもない」と話していた。2か月にわたり、米40㎏とレトルト食品・調味料・お菓子・ジュースなどを40㎏程度4回に分けて支援した。
コロナ休園で自宅保育→パート解雇
今年春、二男の通う保育園がコロナ禍の影響で休園となってしまった。奥さんがやむを得ずパートを休み自宅で保育していた。しかし、1か月以上の休職となってしまったのでパート解雇となってしまう。収入は激減し、再度FB利用した。社会福祉協議会の緊急小口資金貸付窓口へ相談するように勧めた。米10㎏、食品6㎏を支援した。
肺炎で緊急入院、2ヶ月収入なし
さて、今回9月中旬の清水さんの話は驚きであった。お盆前に、40℃の発熱をし、救急車で市内の救急指定病院へ緊急入院していたとのこと。「意識不明の状態が2週間続いた」とずいぶん重篤な病気だったようである。コロナウィルス感染か?と、大騒ぎであったが、コロナは陰性。レジオネラ肺炎だったそうである。家族のレジオネラ感染はなかったので職場環境(水を使うプレス加工の職場で、プレス機械を大量の水で洗浄したらしい)かもしれない、と医師に言われた。次の診察で就労が可能かどうか判断されるとのこと。思わず「それでは約2か月間は収入無いの?」と聞いてしまった。今回の医療費は、派遣会社の健康保険が使え、限度額認定証によって高額療養費払いができ、傷病手当金の申請もできることは救いである。米12㎏、野菜含む食品13㎏支援した。
2年半の間、8回FBの支援を受け、ピンチを切り抜けながら子育て中の清水さん。「長女が、学校に休み届を出して、わざわざ親父の面倒を看てくれているんだ」とニコニコだ。娘に野菜の調理法を聞きながら、食品を受け取って行く清水さんであった。
レジオネラ症-レジオネラ症(legionellosis)は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)を代表とするレジオネラ属菌による細菌感染症。主な病型として、重症の肺炎を引き起こす「レジオネラ肺炎(在郷軍人病)」と、一過性で自然に改善する「ポンティアック熱」が知られている。レジオネラ肺炎は、1976年、米国フィラデルフィアにおける在郷軍人集会(Legion)で集団肺炎として発見されたところから、legionnaires’ diseaseと命名された。これに対して、ポンティアック熱は、1968年に起こった米国ミシガン州ポンティアック(Pontiac)における集団感染事例にちなんで命名されました。レジオネラ症の潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は、2~10日。レジオネラ症の主な病型としては、重症のレジオネラ肺炎と軽症のポンティアック熱が知られている。レジオネラ肺炎は、全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛などの症状に始まり、咳や38℃以上の高熱、寒気、胸痛、呼吸困難が見られるようになります。まれだが、心筋炎などの肺以外の症状が起こることもある。また、意識レベルの低下、幻覚、手足が震えるなどの中枢神経系の症状や、下痢がみられるのもレジオネラ肺炎の特徴とされている。軽症例もあるものの、適切な治療がなされなかった場合には急速に症状が進行することがあり、命にかかわることもある。
(厚生労働省HP・感染症情報)
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